僕たちは、食の自給を人生の大きなテーマとして掲げています。
フォレストガーデンは、僕たちの食生活を豊かにしてくれる菜園です。「森のように自律的に維持・成長する生態系を模したガーデン」を目指しています。
これは、都市部でも、小さなスペースでも自給自足を楽しめるように創意工夫をこらした僕たちなりのガーデンです。僕たちは生き物がたくさんいる場所が好きで、植物が生い茂る空間をつくっています。ガーデンはどんな考え方や方法でつくっても構いません。

我が家のガーデンには野菜やハーブ、果樹などが混植・密植されていて、蝶やミツバチなどが舞い踊っています。ハーブの良い香りが漂っています。


僕たちは毎日、その日の食卓に必要な分の野菜やハーブを摘み取っていきます。ここには通年、季節にあった多種多様な植物が植えられています。




使わなかった分の野菜は、そのまま枯れさせて土に還します。すべてを収穫することはありません。
土の中にはミミズがいて、地面にはコオロギやトカゲやカエル、少し高いところには蜘蛛やカマキリなどもいます。目に見えない微生物もたくさんいます。
ガーデンは食を豊かにしてくれるだけでなく、生態系を再生する力があります。カラカラの荒れ地も、1年くらいあれば野菜とハーブが生い茂ります。



ガーデンは計画的につくっていいし、行き当たりばったりでつくってもいいです。慣れてくると、水源、水はけ、方角、風通し、日当たり、元々存在する植物、いろんなことを考慮してデザインできるようになります。僕たちの自宅では自分たちが心地よく過ごせるような動線をデザインしています。


自宅のガーデンにはU字のレイズドベッドを設置し、僕たちが動きやすく、全体に満遍なく手が届くようにしています。元々あった松の木にはヒモをかけて、つる性植物の住処にします。空間を上手に使うように心がけています。空間を生かすことで、収穫量は大きく変わります。
作物を育てるための栄養は、実はそこらじゅうに存在します。動植物の亡骸。根粒菌やアゾトバクターなどの窒素固定菌。生ごみコンポストから生まれた堆肥。
すべての生命は有機体であり、その体は炭素、窒素、水素、酸素とその他たくさんのミネラルでつくられています。命は役目を終えると微生物に分解され、土に還ります。

植物を育てるための栄養は、家庭菜園レベルでしたら海外からのエネルギーや資源に頼らなくてもまかなうことが出来ます。僕たちは実体験からそう思っています。
一般常識であれば、野菜を植える土を耕すことは当然です。でもここでは、土を耕すことはマストではありません。耕してもいいし、耕さなくてもいいのです。

植物の根や小動物たちは、土の中を動き回ります。僕たちの土には団粒構造が出来ていて、粒の隙間に水分や栄養が保持されています。いつも少しだけ湿っていて、だけど空気を含んでいて、握ると弾力があります。
土の表面がそのまま剥き出しになっているところはありません。

野菜やハーブが植えてある以外の場所は、枯れ草を敷いたり、クローバーや地這い系植物で地面を覆っています。地を這う植物は、つる性のウリ科野菜などでもいいし、ランナーを伸ばすイチゴなどでもいいです。天然のマルチです。
クローバーの根っこにはつぶつぶした根粒菌(こんりゅうきん)がたくさんいます。クローバーだけでなく、マメ科の植物はこの根粒菌と共生しています。


植物は空気中の窒素(N)を直接取り入れることは出来ません。窒素を自然界から取り入れることが出来るのは、特定の菌だけです。
その一つである根粒菌は宿主であるマメ科植物から糖分をもらう代わりに、重要な栄養素である窒素(N)を宿主に渡します。
さらに、余った窒素は、他の植物たちが育つように土の中に放出してくれるのです。自然界の共生モデルには驚かされることがあります。
クローバーは繁殖力が強すぎるので、家庭菜園では嫌う人が多いです。でも、我が家のガーデンでは積極的にクローバーを植えます。クローバーと野菜は共生しにくいのですが、我が家のような小さな裏庭で、コツを掴めばうまく共生します。逆に広い場所だと、手に負えず難しいかもしれません。

ガーデンの土の中では、目に見えない微生物、糸状菌や放線菌、細菌たちなどによって発酵・分解のプロセスが常に行われています。手にとって匂いを嗅いでみると、なんとなく状況がわかります。バランスが良いと、心地よい匂いがします。でも、そこに存在する有機物が微生物が分解できるキャパシティを超えていると、少し嫌な匂いがします。
ガーデンには生き物がたくさんいますから、虫や病気によって野菜が食べられなくなることも少なくありません。カメムシやナメクジが押し寄せてくることもあります。

うどんこ病菌などは毎年発生する手強い相手です。風通しや日当たりなど対策が出来ない環境によっては、どうしても防げないことがあります。
でも、そんなときでも僕たちは慌てませんし悲しくもありません。自然は人間に対して特別に優しくしてくれたりはしませんので、それをわきまえています。

人生を豊かにするうえで、広い視野とユニークな視点を持つことがとても大切だと感じています。どんな生き物にも多面性があります。
例えばミミズは、土の中を動き回ることで天然の耕運機の役割を果たしています。また、土の中の有機物を食べて排泄物を出し、それは肥料になります。唾液は土の粒をくっつけて、団粒を形成してくれます。
クローバーは野菜を駆逐してしまうこともありますが、うまく使えば天然のマルチにもなるし、根粒菌によって野菜に栄養を与えます。あまり美味しくないですが、食べることも出来ます。
虫たちは野菜を食べることもありますが、命を終えると微生物に分解され、肥料として次世代の糧になります。ある物事を一方向からだけではなく、逆から眺めてみます。

自然界は循環しながらバランスをとっています。濃度が濃くなると薄めようとするし、何かが過剰になると分解しようとします。人間の都合は関係なく、押せば押し返してくるし、沈めたら浮いてきます。
ある種の虫や病気が大発生することがありますが、自然界はバランスを取ろうとしているのかもしれません。何が起きているのか想像したうえで、虫や病気を手作業で取り除いてもいいですし、薬で対応してもいいですし、様子を見るだけに留めてもいいのです。虫に野菜を食べられたくないとき、僕の場合はデコピンで追い払います。
ガーデンはどこにでもつくることが出来ます。うまく機能していればメンテナンスがとても楽です。僕たちの仕事は種まきと苗の定植、そして収穫に集中することが出来ます。
水源がない場所でも、車でアクセスできない場所でも大丈夫です。小さな庭でもいいですし、そこらへんの空き地でもいいです。

だから、都市部の小さな隙間でもつくることができます。地域の身近な場所に、創意工夫のチャンスが隠れています。
ガーデンに明確なルールや決まりはありません。フォレストガーデンという呼び名も、いろんな名前がある中で僕たちにしっくりくるものを選んでいるだけなのです。すべて自由です。
世界には色んなガーデンがあります。
permaculture garden
self-sufficient garden
homestead garden
kitchen garden
backyard garden
みんな共通しているのは自然に対してリスペクトがあり、ガーデンは単に食料を得るだけでなく、人生を豊かにするライフスタイルそのものになっていることです。ガーデンは豊かな食生活のある暮らしを叶えてくれます。




