痩せたい、健康でいたい。そう願うのに、運動が続かない。そんな経験は誰にでもあります。
でも実は、健康づくりは“がんばる運動”だけが答えではありません。
家事や買い物、立つ・歩くといった日常の動きが、静かにエネルギーを消費しています。
これをNEAT(ニート:非運動性活動熱産生)といい、研究では1日あたりの消費カロリーに500〜2000kcalもの差が生まれる可能性が示されています。
つまり、暮らしそのものが、あなたの体を整える力になるのです。
がんばらなくていい健康習慣。それがNEATという視点です。
運動習慣が身につかない方へ
痩せたい、健康でいたい。これは多くの人に共通する願いです。
そのためにジムへ入会してみるけれど、忙しさに押されて続かない。気づけば幽霊会員。
「続けられない自分が悪いのかな…」と落ち込んでしまうこともあります。
健康習慣でいちばん難しいのは“始めること”ではなく“続けること”。
仕事、家事、育児、人間関係…日常にはすでにたくさんのタスクがあります。その上に“運動”を積み重ねるのは、そもそもハードルが高いのです。
運動ではない“動く習慣”は存在する

実は、人の体は特別な運動をしていなくても、日常のささいな動きだけでエネルギーを消費しています。
立つ、歩く、掃除をする、料理をする、買い物に行く。こうした“暮らしの動き”が、長期的には大きな差を生むんです。
なかなか続かない運動習慣より、自然に続く生活のほうが強い。
その鍵となる考え方が NEAT(ニート)です。
NEATという選択
NEAT(ニート)とは
Non-Exercise Activity Thermogenesis の略で、
「非運動性活動熱産生」と訳されます。
つまり、“運動以外の生活活動による消費エネルギー”のこと。
運動、いわゆるExercise(エクササイズ)とは別の概念です。
・立つ
・歩く
・階段を上る
・掃除、料理、洗濯
・子どもの送り迎え
・庭や植物の世話
これらすべてがNEATです。
そして驚くべきは、その個人差。
同じ体格でも、日常の動きだけで1日あたり 500〜2000kcal もの差が生まれる可能性があると示した研究があります。
参考:James A. Levine(2005)
つまり、“普通に暮らすだけ”で人生レベルの消費カロリーの違いが積み重なるのです。
人の1日の消費エネルギーは次のように分配されています👇
基礎代謝(BMR):60〜70%
食事誘発性熱産生(DIT):約10%
“運動”による消費:5〜10%
NEAT:最大20〜40%
実は、ジムで運動する時間より、日常の動きのほうが伸びしろが大きいのです。
長期的には、運動よりも効果が期待できる
NEATには、運動にはない特徴があります。
① 続く(意志力をあまり必要としない)
ジム通いには移動・時間・準備が必要ですが、
NEATは生活そのもの。脱落しにくいのです。
研究でも、運動(エクササイズ)習慣は3か月以内に50〜70%が失われると報告されています。
② 代償行動が起きにくい
運動後、「今日は動いたし休もう」「ちょっと多めに食べよう」
という反動が起きることがあります。
これは“compensation(代償)”と呼ばれ、実際の消費カロリーを相殺することがあります。
NEATは低強度で自然な行動のため、この反動が起きにくい。これが大きな強みです。
③太りにくい体質を育てる
短期的に痩せるのではなく、
“日々の生活がエネルギーを消費する状態”をつくれる。
つまり、NEATは未来への健康投資なのです。
副交感神経が活性化する“やさしい動き”
高強度の運動(エクササイズ)は交感神経を刺激します。
一方、NEATはゆるやかで、呼吸やリズムが整いやすく、副交感神経が働きやすいと考えられています。
つまり、がんばる運動より“ゆるく動く”ことで体とメンタルをゆったりと整えるイメージです。
日常にNEATをデザインしよう

NEATは努力ではなく、環境のデザイン。
生きるために必要な動線の中に、“動き”を組み込んでいくのです。
日常の動きによる消費カロリーは、基礎代謝に次いで大きい。これは、健康を考えるうえで重要な事実です。
実際、世界一の健康・長寿地域であるブルーゾーンの人々が、NEATの重要性を示唆しています。彼らは運動(エクササイズ)習慣よりも、日常の動きによって健康を保っているのです。
とはいえ、体を動かすことが少なくなった現代において、日常の中で“動き”をデザインしていくことは工夫を要します。
重要なのは、
・その動き自体が生きるための行為であること。
・喜びや安らぎを伴うこと。
・体だけではなく、心も整えること
です。ぜひ、日常の中にNEATをデザインしてみてください。


