「成果=大きく一気に」という常識を手放すとき、暮らしにちいさな変化が連鎖しはじめます。
この学びでは“学びながら育てる”プロセスを大切にし、自然・心・暮らしがともに育つ視点を探ります。
畑も、身体も、関係も――すべては途中からかたちを持つ。
あなたの“ちいさな成功”が、未来の大きな循環をつくる。
その設計術を、ここに届けます。
Small & Slow Solutions(小さくてゆっくりした解決策)
僕たちは、何かを始めるとき、つい「大きな成果」を目指してしまいます。
起業するなら成功しなければ意味がない。
絵を描くなら上手くなければ恥ずかしい。
暮らしを変えるなら、すぐに結果が出なければ続ける価値がない。
そんな風に、僕たちはいつの間にか“スピードと比較の社会”を生きるようになりました。
SNSでは他人の成功が流れ続け、目に見える数字や成果ばかりが評価される。
気づけば、「始めること」よりも「うまくいくこと」ばかりを考えて、身動きが取れなくなってしまう。
でも自然の世界では、どんなに立派な木も、最初は小さな芽です。
芽は焦らず、風や光、水を感じながら少しずつ根を張り、成長していきます。
植物を育ててみるとよくわかるのですが、まだ苗の状態でたくさん肥料をあげて成長させると、その子は後々弱い個体になります、
本当に持続するものは、いつだって“ゆっくり”なのです。
「Small & Slow Solutions(小さくてゆっくりした解決策)」は、この自然のリズムを私たちの暮らしに取り戻すための知恵です。
それは、焦らず、小さく始め、観察しながら育てていく生き方。
“成功”を遠い未来の結果ではなく、“今この瞬間”に取り戻す哲学でもあります。
夢を叶える瞬間は、“結果”ではなく“始まり”にある
たとえば、「歌手になりたい」と夢を抱く人がいるとします。
もしその理由が「お金持ちになりたい」「有名になりたい」なら、その夢は“デビューしてヒット曲を出すまで”叶わないことになります。
けれど、「歌いたい」「自分の声で誰かを元気づけたい」という想いであれば、歌うという行為そのものが、すでに夢を叶えている状態です。歌うこと以外に成功の条件はありません。
ステージでライトを浴びるときだけが“成功”ではありません。
部屋の中でギターを弾きながら口ずさむとき。
友人の結婚式で歌声を届けたとき。
通勤中に鼻歌を歌って、隣の人が笑顔になったとき。
そのすべてが、“小さな夢の実現”。
僕たちはしばしば、「まだ何もできていない」と感じます。
でも実は、“もう始めている”ことの中にこそ、最も確かな成功があるのです。
小さく始めることは、自分を信じて一歩を踏み出すこと。
それが、どんな夢であれ、本当の意味で“叶える”ということなのです。
小さくて高密度
自給自足と聞くと、多くの人は広い土地や田舎での暮らしを思い浮かべるかもしれません。


でも、僕たちのフォレストガーデンは、都市の郊外、住宅地の中にあります。
広さはわずか20㎡。
けれど、この小さな庭で、夫婦ふたり分の野菜を育てることができています。
庭には果樹やハーブ、背の低い野菜、グラウンドカバーとなる植物が層になって共生しています。
ミツバチや蝶が訪れ、雨が降れば土が水を吸い込み、やがて次の命を育てる。
この20㎡の世界の中で、自然の循環が息づいているのを感じます。
大切なのは広さや規模ではなく、「小さく始めて、関わりの密度を高めていくこと」。
小さい空間だからこそ、光の向きや風の流れ、土の香りの変化にすぐ気づける。
自然と共に生きるというのは、どこか遠い理想の話ではなく、「いまここ」にある小さな関係性をていねいに育てることなのだと気づかされます。
条件が整うのを待たず、“今できること”から始める
よく、「農的暮らしを始めたいけど、お金がない」「土地がない」「知識も経験もない」と言う人がいます。
でも、僕の考え方は違います。土地もお金もないからこそ、パーマカルチャーがあるのです。
本当に大切なのは、条件ではなく考え方。
「いつかできるようになったら始めよう」と思う限り、その“いつか”は永遠に来ません。
お金があっても、土地があっても、そのときにはまた別の言い訳を探してしまう。
僕たちが始めたときもそうでした。

20代半ば。医療以外の世界を知らない僕でしたが、仕事をやめて、お金もない。もちろん土地もない。知識もスキルも何もない状態。
それでも何かを生み出せる人間になりたいという漠然とした想いを抱えた僕は、近所の人にほとんど無料で空き地を借りて、右も左も分からないままとりあえずで野菜を育てたんです。

でも、その小さな一歩を踏み出した瞬間、庭は“始まった”のです。
そして始めてみると、必要な知識やつながりは後から自然と集まってきました。

土や植物への知識が深まり、盆栽ブランドをつくりました。不思議なことに、今では僕が大好きな「自然」や「創作」を主軸にした会社を経営しています。

「条件が整ってからやる」のではなく、「やることで条件が整っていく」。
これが、小さく始めるという生き方の本質だと僕は思います。
小さな空間でも、夢はちゃんと叶う。
キッチンでハーブを育ててもいい。
ベランダに一鉢置くだけでもいい。
“今できること”に目を向けることで、暮らしは少しずつ、でも確実に変わっていくのです。


