腸が整うと、幸福感が高まると聞いたことはありますか?
それは、僕たち生命のリズムを担うセロトニンというホルモンが大きく関わっています。
腸の調子が良くなると、心の幸福感もふえる。なぜ、腸と心がつながっているのか。僕たち生命が歩んできた進化の歴史から紐解くと、幸せホルモン・セロトニンの仕組みが理解できます。
生命が持つ幸せのリズムについて、学んでみましょう。
腸と心はセロトニンでつながっている。

腸が整うと幸福感が高まるのは、腸と脳が“リズム”でつながっているからです。
実は、腸のぜん動運動を行うホルモンと、脳で幸せを感じるホルモンは、どちらも同じ「セロトニン」です。
私たちの体では、腸の活動が安定していると、その安心感の信号を迷走神経を通じて脳に伝えています。
腸の働きが安定していると、脳もそのリズムを感じ取り、安心や落ち着きを保つようにバランスを取ります。つまり、腸が体のリズムを整えることで、脳のリズム、すなわち“心の安定”が保たれているんです。
腸の運動を司るセロトニンと、脳で幸福感をつくるセロトニンは、同じ物質なのですが、その使われ方は異なります。
腸では「体のリズム」
脳では「心のリズム」
を整える。腸がスムーズに働いているとき、私たちは自然と幸福感を感じます。それは、腸から脳へ送られる“リズムの信号”を、心が静かに受け取っているからです。
幸せホルモンセロトニンは、元々体のリズムをつくる役割

はるか昔。まだ体の神経ネットワークが発達していなかった頃から、セロトニンは活躍していました。
セロトニンはもともと「腸」で、消化や排泄など生命活動のリズムを整えるために働いていたんです。
食べる→消化する→排泄するの流れを作るためには、腸がぜん動運動を起こし、体の中で食べ物を運ばなければいけません。この“ぜん動運動のリズム”つまり体全体のリズムを司っていたのが、セロトニンなんです。
そんなリズムホルモンのセロトニンなのですが、進化の過程でそれは“情報を伝える物質”として脳でも使われるようになりました。
つまり、脳で生み出されるセロトニンは「気分」や「感情の安定」を担うようになったんです。腸で使われていた“体の安定を保つ仕組み”が、脳では“心の安定を保つ仕組み”へと進化したのです。
腸で産生されたセロトニンは、脳では使われない
注意したいのは、腸で作られたセロトニンが脳へ直接届くわけではないということです。
脳と体の間には、血液脳関門という壁があります。これは、脳には異物が入らないように頑丈なフィルターがあり、腸でつくったセロトニンも、そこでブロックされてしまうんです。
腸のセロトニンは主に「体」で使われます。原始生物の時代と同じように、現代の僕たちの体でも腸のぜん動のために使われます。つまり、体全体のリズムを生み出す。
けれども、腸が出す“安心のリズム”は、迷走神経という“脳と腸をダイレクトに繋ぐ神経”を通じて脳へ届きます。
だからこそ、腸の調子が整うと、脳もそのリズムを感じ取って安心する。つまり、腸のセロトニン量が整うと、脳もそれにつられてセロトニン量を最適にしていく。体と心は、目に見えないリズムで響き合っているのです。
腸は、セロトニンを通じて生命のリズム(調和)を生み出す

腸が産生するセロトニンは生命のリズムを整え、その結果として心の幸福感は安定します。
セロトニンは、私たちの体が“外の世界と調和して生きる”ためのリズムの言語。腸が穏やかに動いているとき、脳もまた安心を感じ、心は静かに整っていきます。
だからこそ、毎日の食事でそのリズムを整えることが大切なんです。発酵食品や食物繊維をしっかりとること、腸を冷やさずに温めること。そうした小さな積み重ねが、腸内の環境を育み、心の安心へとつながっていきます。
だからこそ、腸を整えることは、単なる健康のためではなく、“心の安定”を取り戻すための営みでもあるのです。


