日本の痩せ問題
日本では、高度成長期以降ゆるやかに肥満率(BMI25以上)が増えてきましたが、一方で“痩せすぎ”の人も確実に増えています。
特に若年層の女性では顕著で、痩せの基準(BMI18.5未満)の割合が20%近くにのぼります。これは国際的に見ても高く、日本社会の傾向として指摘されています。
自然な体質として痩せている人は問題ありません。ですが、“痩せなければいけない”という思い込みから無理に体重を落としすぎると、逆に太りやすい体質をつくってしまうんです。
自己イメージの歪み「痩せなきゃ価値がない」
この現象の背景には、日本特有の文化的な価値観があると思われます。
〇太っている=自己管理ができていない・だらしない
〇痩せている=かわいい・美しい
SNSで過剰に痩せ加工された動画や画像が、この価値感をさらに強めていきます。「みんな痩せてるのに、私は太ってる」という誤解が生じているかもしれません。
その結果、自己イメージが大きく歪んでしまい、本来必要のないレベルまで痩せようとする傾向が生まれてしまっている。
自然体で痩せ型の人は問題ありません。けれど、過剰に痩せを追いかけることは、体質を弱らせ、太りやすさを育てる原因になります。
過剰な痩せによって生じる心と体の変化
食育ダイエットの視点で見ると、痩せすぎは体の機能を静かに、でも確実に弱らせていきます。
自然な痩せと不自然な痩せの違い
同じ「痩せている」でも、その中身は大きく違います。
自然に痩せている人は代謝が安定し、NEAT(無意識の運動)も保たれ、筋肉と体温のバランスが自然と整っています。
一方、無理な食事制限や自己イメージのストレスから痩せてしまった人は、筋肉が落ち、体温が下がり、代謝が弱るという“内部の崩れ”が起きています。
外からは同じ痩せでも、健康状態はまったく違うんです。
基礎代謝が落ちて体温が下がる
痩せすぎの状態では、体が“節約モード”に入ります。体温を維持するにはエネルギーが必要ですが、エネルギーが不足すると体はまず体温を下げて、消費を抑えようとします。
体温が下がると消化の働きも鈍くなり、眠気・だるさ・冷えが強まり、そこからさらに代謝が落ちるという悪循環に入ってしまいます。
NEAT(生活活動量)が下がる
NEATとは「歩く」「立つ」「家事をする」など、日常の動きで消費されるエネルギーのことです。
痩せすぎで体力が落ちると、動作がゆっくりになり、座る時間が増え、NEATが自然に低下します。
NEATが落ちると1日の消費カロリーが大きく減り、結果的に“太りやすい体”になってしまいます。
筋肉がつきにくくなる
筋肉をつくるには「材料(たんぱく質)」と「エネルギー」の両方が必要です。
痩せすぎでエネルギーが不足すると、体は筋肉を修復する余力を失い、筋肉が増えにくくなります。
筋肉がつかない → 基礎代謝が落ちる → さらに痩せる → さらに筋肉が落ちる
という終わりのないスパイラルに入り込みます。
脂肪が優先してつきやすくなる
体が「エネルギーが足りない」と判断すると、次に食べたものを脂肪として優先的に蓄えようとします。これは生命を守るための自然な仕組みです。
その結果、
食べる → 脂肪がつく → でも筋肉は増えない
というアンバランスな体質が続いてしまいます。
食べない我慢 → 反動で食べすぎ → リバウンド
食事の我慢が続くと、脳の「もっと食べたい!」という反発のスイッチが強く入り、反動で食べ過ぎが起こりやすくなります。
特に糖質や脂質への欲求が強まり、食べ始めると止まらない“暴食モード”に入りやすい。結果として脂肪だけが急につき、体重が戻り、自己嫌悪が強くなる。これがリバウンドの本質です。
自己イメージを見直そう
食育ダイエットでは、“痩せること”を目標にしませんし、体重にもこだわりません。
体重という数字は水分量だけで1〜2kg簡単に変わります。糖質オフで体重がすぐに落ちるのも、その多くが“水”です。
体重は健康の指標として不正確で、“美しい体型”ともほとんど関係がありません。
大切なのは、
太っている=悪
痩せている=善
という極端な二分論から離れることです。
僕たちが目指すべきなのは、数字ではなく、生命のリズムが整っていく食育です。
極端な偏食で痩せても、すぐ元に戻ることは、これを読んでいるあなたが一番よく分かっているのではないでしょうか。食育は、自己イメージやマインドを含めた広い視野で物事を見ることが大切なんです。
まずは食事内容というよりも自己イメージを見直すことが大切です。本当に、過剰な食事制限や偏食を始める必要があるのか考えましょう。
痩せなければ、という恐怖がある方はぜひ当サイトの「ココロとからだ学」の記事も読んでみてください。心(世界の認識)が変わるだけで、問題は解決することがあります。


