「続けたいのに、続かない」
勉強も運動も、最初の三日で止まってしまう。
そんな自分を責めたことはありませんか?
でもそれは、意志の弱さではなく、脳の仕組みの問題です。
脳は変化を“危険”と感じ、つねに「やりたい」と「やめたい」のあいだで揺れています。
この摩擦を理解し、うまくデザインできれば、誰でも習慣を身につけることができます。
この記事では、脳の理性回路と自動回路という二つの働きから、
なぜ習慣化が難しいのか、どうすれば続けられるのかをやさしく解き明かします。
脳は新しいタスクを嫌う。ワクワクモードVSやめとけモード
習慣化を実現していくうえで、僕たちの前には2つの壁が立ちはだかります。
その一つが、「ワクワクモード vs やめとけモード」。
勉強、運動、ダイエット、自炊。
習慣化のテーマとして掲げられる日常の営みはたくさんありますが、
「よし、明日から継続して頑張るぞ」と思っても、気づけば三日坊主になってしまう。
そういう経験は誰もが一度はあるのではないでしょうか。
まず知っておきたいのは、脳は変化(新しい挑戦)を“危険”と感じているということです。
いつもと同じタスクであれば、それは安全であることがある程度担保されていますので、脳は恐怖を感じません。
しかし、新しいことを始める際は必ず“未知”の部分があります。この未知の部分が怖いのです。
脳の中ではいつも、2つの力がせめぎ合っています。
ワクワクモード(アクセル):
やってみたい、成長したい、という前向きな回路。ドーパミン回路が働く。
やめとけモード(ブレーキ):
変化はリスクかもしれないという後ろ向きな回路。恐怖センサーの扁桃体が働く。
この2つが同時に働くと、脳の中で「やってみたい」と「やめよう」がぶつかり、“摩擦”が生まれます。
つまり、「やりたいけど続かない」という状態は単なる怠けではなく、脳が「安全」と「挑戦」のあいだで迷っている状況です。
しかし、これは意思の力でも乗り切れる可能性が高いです。
本当に高い壁はもう一つあるんです。
習慣は「理性回路」&「自動回路」でできている
私たちが行動するとき、「脳の負担」という視点からみると、2つの回路に分けることができます。
①理性回路(意識で考える):
脳の前頭前野という部分が担当。考える・判断する・計画を立てるなど、意識的に決める働きをします。いわば手動モードです。
②自動回路(無意識で動く):
脳の線条体が担当。くり返しの行動を脳のネットワークに登録し、考えなくても動けるようにします。
歯磨きやスマホチェックのような、無意識レベルで行える自動モードです。
新しい行動を始めるとき、最初はどちらかというと理性回路が主導します。
理性回路の主役である前頭前野は、意識で考え、判断し、行動をコントロールする“理性の司令塔”。
つまり、ひとつひとつのタスクを「まずこうする。次どうしよう?」と考えながら進めないといけない。
理性回路はエネルギーの消費がとても大きく、長期戦には向いていません。
だから最初の数週間は疲れやすく、続かないように感じるのです。
けれど、同じ行動をくり返すうちに、自動回路がその動きを覚えていきます。
これが習慣化の始まりです。
自動回路の主役は線条体。
何度もくり返した行動を自動化して、考えずに動けるようにする“習慣のエンジン”。
習慣化とは、理性回路から自動回路へ、行動の主導権をバトンタッチすること。
つまり、意識的に考えなくても自動で動けるところまで持っていくということなんです。
この切り替えには、だいたい6〜8週間ほどかかります。
自動回路が働くまで、とても長い期間が必要なのです。
思考を伴うタスクは、自動回路になりにくい
勉強・自炊・運動・ダイエットなどは、理性回路を使う“考える習慣”です。
やるたびに「何を」「どのくらい」「どうやるか」を決めなければいけない。
この判断が多いほど、脳の負担は増えていくんです。
一方、歯磨きや通勤のようなシンプルな行動は、自動回路を使います。
つまり、考えなくても自動的にできるようなタスクです。
たとえば勉強と歯磨き、どちらが習慣化しやすいかというともちろん歯磨きです。
思考(前頭前野)を伴う行動ほど、脳の燃費が悪く、習慣化しにくい。
勉強習慣などが分かりやすいですね。
逆に、歯磨きのようにシンプルなタスクは習慣化しやすい。
つまり、あまり考えなくていいので自動回路になりやすい。
だから、勉強や自炊、運動のような「思考を伴う習慣」を続けるには、まず“考えなくても始められる仕組み”をつくる必要があります。
タスクを自動回路メインに。タスクをモーションに変えよう。
考えなくても始められる仕組みというのは、今お伝えした脳の回路を、逆に利用することが大切なんです。
習慣化に向かう通常の流れですと、
まずは考えながらやる→徐々に無意識でもできるようになる。
これはつまり、理性回路→自動回路の順番で進むことになります。
大切なのは、この理性→自動の流れを順序よくクリアしていくのをやめること。
つまり、スタートの時点で自動回路の方に照準を合わせることなんです。
そのために必要なことは、“タスクを、動き(モーション)化する”こと。
たとえば普通、「勉強→知識を覚える」という世界をイメージすると思いますが、まずはその認識から離れましょう。
その代わりに、「机に座る」「ノートを開く」という“動き”だけをタスクにしてください。
これで“達成”です。
それ以上の質(何分できたか、どこまで理解できたか)は気にしない。
むしろ、やらなくてもいい。
運動の場合はどうでしょう。
「運動→〇Kg痩せる/〇分走る/筋トレ〇回」という世界を離れます。
「靴を履く」「外に出る」これだけで達成。
ダイエットなら、「体重を測る」「水を飲む」だけで達成。
つまり、まずは深く考えなくていい動作(モーション)を脳に覚えさせる。
これは、理性回路を最小限にして最初から自動回路を狙う裏技的方法です。
これをくり返すうちに、自動回路がその行動を脳のネットワークに登録します。
勉強でいえば、知識を学ぶための動き(机に座る/ノートをひらく)
さえ自動回路に入れば、習慣化の8割が達成されたといっても大袈裟ではありません。
この時点で、初めて教科書をじっくり読んでみる。
重要なのは最初から“質を求めない”こと。
まずは動きを自動化、その後に思考(理性)へ。
この流れに乗せると習慣化がとてもやりやすくなります。
まとめ
どんなタスクでも、同じように考えて実践してみましょう。
自炊なら、まずはインスタント味噌汁から作ってみる。これで達成。
ダイエットなら、鏡の前に立ってみる。これだけで達成。
どんなアプローチをするかはあなたの自由です。自分で考えて思考錯誤するのは、楽しいと思います。
もう一度お伝えしますと、習慣化には6〜8週間くらいかかります。
その間、どれだけ脳の負担を減らせるかが成功の鍵です。
ぜひ参考にしてみてください。


