日本人は昔より総摂取カロリーも炭水化物も減っているのに、肥満率だけが上がってきました。「食べていないのに太りやすくなる」のはなぜか。その背景には、気づかないうちに進む“栄養のアンバランス”という構造があります。本記事では、時代ごとの摂取データをもとに、現代人の食事がどのように脂質へ偏っていったのかを解説しながら、脂質を悪者にせずに比率を整える「ご飯+具沢山味噌汁」中心の食事デザインについて紹介します。食材をジャッジせず、我慢せず、無理なく続けられる“本来の食べ方”を取り戻すためのヒントをまとめています。
食べる量は減っているのに、なぜ太りやすくなるのか
「食べる量は減っているのに、なぜか太りやすくなった気がする」
こう感じる人は少なくありません。
実際、日本の歴史的なデータを見ても、この感覚は“気のせい”ではなく、数字として表れています。


高度成長期(1960〜1970年ごろ)、日本人の食事は最も“よく食べていた時代”でした。
総摂取カロリーは 2540kcal/日、炭水化物摂取量は 480g/日 と、今より圧倒的に多かった。
ところが、これらはその後ずっと減少しています。
現代の総摂取カロリーは 1900kcal前後。
これは実は 終戦直後とほぼ同じレベル なのです。
炭水化物摂取量も 380g程度 と、終戦直後の 420g より少ない。
つまり、「食べる量全体」も「炭水化物量」も、過去と比べて大きく減っています。

それにもかかわらず、BMI。つまり肥満率は上がり続けています。
終戦直後の肥満率(BMI25以上)は 5%前後。
現代では、男性は 30%超え、女性は 20%超え にまで増えている。
体重が増えること自体が悪いわけではありません。
しかし、日本全体として“食べていないのに体重が増えている”という構造は、冷静に考える必要があります。
では、何が増えているのか。
実は、唯一明らかに増加している栄養素が 脂質 です。

脂質摂取量は、戦後右肩上がりに増えています。最新のデータでも60g/日は超えています
つまり、
総カロリーは減っている
炭水化物も減っている
それでも太りやすくなっている
その裏にあるのが、“脂質比率の過剰” という見えない構造なのです。
隠れた脂質という落とし穴
現代の脂質摂取量は、一見すると「平均的」で大きな問題がないように見えるかもしれません。
実際、国民健康・栄養調査では、成人の脂質摂取量は 1日およそ61g と報告されています。
しかし、この数字をエネルギー比率に換算すると、脂質だけで 約550kcal を占め、
総摂取カロリー1900kcalの食生活では脂質エネルギー比率が 約29% になります。
脂質の理想的な比率(PFCバランス)は 20〜30% とされるため、現代の食生活は “上限ギリギリのラインに常に触れている” 状態なのです。
ここで重要なのは、
脂質は1gあたり9kcalとエネルギー密度が高く、知らないうちに過剰になりやすい
ということ。
しかも、現代の食環境には “隠れた脂質” が大量に存在しています。
揚げ物、総菜、外食、コンビニ食、パンや焼き菓子、洋食系のおかずなど、加工食品の多くは 見た目以上の油を吸収している ため、食べている本人が気づかないまま脂質量が積み上がっていきます。
さらに研究では、
人は摂取した油の量を一貫して過小評価する傾向がある
という報告もあります。
調理油や加工食品に含まれる“見えない脂質”は、自己申告より1.5倍多いとする研究もあります(Fukagawa et al., 2018)
油は砂糖のように「甘い」「濃い」と感じにくいため、脂質の量を正確に把握しづらいのです。
消費者庁の調査でも、
「自分は油を摂りすぎていない」と感じている人が多数派ですが、実際の摂取量との間には大きなズレがあることが示されています。
つまり、
“自覚のない脂質過剰” が現代日本人にとって非常に起こりやすい構造
になっている。
そのため、
「認知できない脂質をもっと摂っている可能性がある」
ということなのです。
太りやすさの本質は“量”ではなく“比率”にある
僕が伝えたいのは、
太る原因は食べる総量や脂質の“量”ではなく、食事内容の“比率”だということ。
脂質自体を悪者にする必要はありません。
比率というのは、分かりやすく言うと
「ご飯とおかず」の比率です。
ご飯とおかずの比率が変わると、体が受けとる負担も、満足感も、代謝の反応も変わるんです。
僕は、
“ご飯+具沢山味噌汁” を中心に据えて、おかずを小皿に載せる
という食べ方をおすすめしています。
この食べ方の真意は、
脂質比率が自然と下がる構造をつくること。
つまり、過剰な脂質はおかずに含まれている、という前提で考えるんです。
脂質だけを意識して減らそうとすると、どうしても我慢になってしまう。
でも、食事の“軸”を変えて比率を整えると、
脂質は意識せずとも自然に適量に収まっていく。
続けられる仕組みにするために大切なこと
さらに、この食べ方には続けやすさがあります。
おかずは、ひとまず小皿に乗せます。
これだけしか食べちゃだめという意味ではありません。
おかずをおかわりしてもいいんです。
ただし、“ご飯と味噌汁も一緒におかわりする”。
これだけで比率が崩れない。
食べる量ではなくて、比率を大切にするんです。
もちろん、脂質にも種類があり、良し悪しだけの問題ではありません。
でも、食材をジャッジし始めると、食事は苦しくなる。
毎度の食事のたびに、「これはどれくらいの脂質が入ってるんだろう」と不安になる必要はありません。
ざっくりと捉えるんです。
「まず、おかずを小皿に盛る」
「おかずのおかわりは自由」
「おかわりするときはご飯も一緒に」
この感覚です。
「おかずを少なく」ではなく、「ご飯を中心に戻す」というマインドに持っていくことが大切なんです。
結局のところ、健康的な食事は“我慢の結果”ではなく、構造が整っているかどうかで決まるのです。
食事の中心をどこに置くか。
比率がどの方向に向いているか。
その“配置”を変えるだけで、
脂質過剰という現代の問題は、静かにゆっくりと解消されていくのだと思います。
補足と注意点
本記事で述べた「脂質過剰」は、現代の肥満傾向を説明する重要な要素の一つです。
ただし、体重の増減には 運動量・筋肉量・ホルモンバランス・睡眠 など、複数の要因が関わっています。
また、「ご飯を中心にすれば太らない」というよりも、脂質の比率を適正化し、代謝が効率よく働く体の環境を整える という視点で捉えるのが正確です。
さらに、おかずに多くの脂質が含まれる傾向はありますが、調理法(焼く・煮る・揚げるなど)によって脂質量は大きく変化 します。
脂質そのものを悪者にせず、食事全体の“比率と構造”を整えることが大切です。


